先日茂木健一郎の「化粧する脳」を読んでいたら、「ミラーニューロン」について書いてあった。「ミラーニューロン」とは脳の神経細胞で、例えば他者が手を伸ばして何かを取ろうとするのを見ると、自分の脳の中でも物を取るときと同じ動きが脳に現れるという。映画を見て主人公に感情移入するのも同じ働きで、この細胞は人間と霊長類にあることは分かっているが、他の動物については不明だという。
だが、俺はカラスと犬にもこの細胞があると思う。以下のような出来事を目撃したことがあるからだ。
上野公園を通りかかったときのこと、大勢の人が1本の木を見上げている。俺も皆の視線をたどってみると、高い木の枝に小鳥が逆さ吊りになっている。どうやら糸か何かが足と枝にからまってしまったらしい。かなり高いところなので、はしごぐらいでは届きそうにない。皆でただ見ているしかなかった時、一羽のカラスが飛んできた。
そのカラスは宙吊りになった小鳥の方に向かうと、足にからまった糸をくちばしで引っ張った。「すごい!」と思ったが、枝が細くてカラスが留まる場所がない。空中静止ができないカラスはそのまま飛び去ってしまった。
時間がなくて、最後まで見届けることはできなかった。でも、このカラスってすごくないか?だって、
・小鳥が大変な状況になっていることを理解した。
・原因が足にからんだ糸であることを推測した。
・糸を取り除けば小鳥が助かると考えた。
こうした一連の、論理的な思考をしたっていうことだもの。
もう一つの例は、かつて飼っていた柴犬のコロの話。
コロが家に来て間もないころ、コロはまだいたずらざかりの仔犬だった。
コロが庭を駆け回って遊んでいるのを見ていた。コロはいろんなものに好奇心を示していたが、そのうち土がいっぱいに入った浅い木箱を見つけた。
コロはその木箱に入った土のにおいをちょっとかいで見た後、片方の前足で軽く土をひっかいた。恐らく「これはいったいなんだろう?」ぐらいな気持ちだったのだと思う。
その時祖母が出てきた。実はその木箱は、祖母が花の種をまくために土を細かくならして整えておいたものだったのだ。祖母はコロが木箱に前足をかけているのを見て、あわてて「そこ、だめ!」と叫んだ。
その時、コロが取った行動は今思い出してもおかしくなる。
コロは祖母の方を振り向いたと思った瞬間、いきなり箱の上に飛び乗り、ものすごい勢いで両方の前足を使って箱の中の土をすっかりかき出してしまったのだ。
箱がほとんど空になると、コロは次の好奇心の対象に向けてとっとと去っていった。
このコロの行動にも犬の思考過程の複雑さが現れているのではないか。コロは、
・目の前の箱に入った土を荒らすと祖母が困ることを理解した。
・祖母が困ると面白いと思った。
・すかさず行動に移した(土をかきだしていたときのコロの顔!)。
この2つの出来事を思い出すと、何とも楽しい気持ちになる。
仲間を助けるカラスや、人間を困らせて面白がる犬なんてディズニー映画の世界だと思っていた。
動物とは、人間が考えているよりはるかに賢いのではないかと思う。
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